日立ハイテク

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売上の約12%を占める研究開発費であり、売上の約1%に当たる知的財産活動費です。5年度、10年後の変化を先取りし、積極的に新しい市場を開拓していくためなら、予算を惜しむことはありません。

一例を挙げれば、日立製作所の中央研究所とのコラボレーションです。これまで私たちは幾度となく、開発テーマに応じて中央研究所の研究員とチームを組んできました。直近でいえば『ビジネス顕微鏡』などが好例です(Vol.18参照)。全体では約300人。全研究所の所員が約3000人ですから、実に1割の研究員のスキルを、プロジェクトに活用させてもらっています。このように当社は、様々なビジネスシーンで日立グループの一員である強みがあるのです。

 実は知的財産活動についても同じことが言えます。日立製作所保有する知的財産は当社の10倍はあります。知的財産活動の仕組みづくり、ノウハウも豊富で、十分練られています。そんな格好のお手本が目の前にあるわけですから、これを利用しない手はありません。

 たとえば自社・他社の特許分析により、研究開発ロードマップを「見える化」すると同時に、知的財産戦略を明確化すること。特許創生を目的とした重点分野のコアとなる差別化技術、または周辺技術の権利化を図る「FS(フラッグシップ)特許活動」。特許育成を図るため、相手別・製品別特許網の構築する「PPM(特許ポートフォリオ)活動」。当社が知的財産活動をダイナミックに展開することができた背景には、日立製作所知的財産権本部との緊密な連携があったのです。

 前述の「FS特許活動」を簡単にいうと、特許出願のための申請書作成です。従来の業務に加えこの活動を新たに研究開発部隊に課したわけです。最初はどのエンジニアの顔にも、やらされてる感がにじみ出ていました。それはそうだと思います。頭の中にあるアイデアを文章化する行為は、面倒でしんどいものです。しかも膨大な量のドキュメント作成ですから、慣れるまで時間も手間もかかります。中には、ノルマや雑務ととらえている者もいました。

 そこで、職務発明制度の対価をアップしたほか、あわせて「特許表彰制度」「報奨制度」の充実を図りました。また、入社5年以内の社員を対象にした「若手トップテン」という表彰制度の導入など、インセンティブ施策を用意することでひとつのきっかけをつくり、FS特許活動の活性化をめざしました。

 もっとも、一番の動機付けになったのはエンジニア自身、申請書作成が自分の仕事のプラスになること、成長する絶好の機会であることに気付かされたことでしょう。なにしろ、申請書作成は仕事に対するモチベーションを高めてくれます。類似のアイデアでは意味がありませんので、申請には個々の特許分析が欠かせません。この分析を通じて、本人はまず競合他社の状況を把握することができます。もし、発明者の氏名欄に同じ名前が頻繁に記載されていれば、「この人がライバルだな」と自分のコンペティターも明確になる。この刺激が大切なのです。

 それから、申請書作成はモノの考え方、技術に対する考え方を整理する上で非常に有効です。不思議なもので、頭の中にあるアイデアを文章化すると、飛躍し過ぎている点や、足りない点が浮き彫りになります。そこで、もう一度考え、改善を加える。この繰り返しが、エンジニアの鍛錬になります。

 現場での私は事あるごとに「文字を書け、文章にまとめろ」と指導しています。結局、どんなに素晴らしいアイデアが頭の中に描かれていたとしても、アウトプットできなければそれはないに等しいということですから。いずれにせよ、こうしたメリットにみんなが段々と気付いてきた。完璧とまでは言えませんが、おかげで現場には知的財産意識がかなり浸透したように思います。